ドイツのスポーツ科学の専門家にドイツ躍進の理由をきく | 日本で活動中のサッカー監督のブログ

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バルセロナで修行してきましたが、2017年より日本で活動しております。

ユルゲン・バイネク(Jürgen Weineck)という方の講習会が
カタルーニャサッカー協会主催で行われ
それに参加してきました。
ドイツで薬学の博士号を修め、
大学でスポーツ科学の教授をしつつ、
様々な著作物を発行している方です。↓

http://de.wikipedia.org/wiki/J%C3%BCrgen_Weineck

73歳のドイツ人のおじいちゃんでたどたどしいスペイン語ながら
情熱をもって語り、実際にトレーニングの例なども
参加者にさせる内容でした。
話の部分部分でドイツ代表がW杯で優勝するために
いかに努力してきたかをうかがい知ることのできる
ところもありとても興味深かったです。

内容としては各育成年代でいかに世界で活躍できる
選手を育てるかというものでした。

驚きは最初にアプローチすべき年代が
3-6歳というところから始まっていたことです。
日本もキンダークラスなどがありますが、
とりあえず遊ばせておけば良いというようなところが多く
明確でコンセプチュアルな指導ができているところは
それほど多くない気がしてます。

バイネクがいうにはドイツはこの年代の育成を
疎かにしていたことが大きな課題と考え、
以前からこの年代の育成改善にかなり注力したそうです。

実際に3-6歳年代で一番、重視されるのは脳神経系の部分です。
例えば子供の体全体から頭の大きさの割合は
成人に比べて大きいように、この時期は身体の成長よりも
脳神経系の成長の割合が高いといえます。

日本でも可塑性の高さという説明をされますね。
特にバイネクが語っていたのは違う作業を同時に
行う動作。それは例えばピアノであったり、お手玉であったり
縄跳びであったりということです。
そのような部分がこの時期には飛躍的に成長しやすく、
逆にこの時期を逃すと簡単に身につかなくなっていく
といっていました。
さらにこの時期についてはサッカーにかぎらず
鬼ごっこやその他のボール遊びやスタビライゼーション系の動きなど
いわゆる体全体のコーディネーション能力を育てることも
重要であるともいっていました。

そしてそれらのコーディネーション能力を身につけるためには
子供が「真似る」癖を利用することが重要になるといってました。
つまり大人や他の子供の動きを真似てみるという
特徴がこの年代の子供にあり、これをうまく
利用すべきだという話ですね。

この話をきいて真っ先に思ったのは
スペイン人のインステップキックの習得についてです。
僕が日本の地域クラブで指導をしていたとき
小学校低学年でボールを蹴らせると
トーキックをする子供がほとんどで、まず最初に
インサイドキックやインステップキックを教えることから
始めねばなりませんでした。
しかしこちらで5歳ぐらいですと利き足であれば
問題なく蹴れている子供がほとんどだったのです。
こちらでは物心がつく前から家族や友人とボールを蹴ったり、
実際にサッカーの試合や練習を見て
誰かに教わる前に既に遊びの中で「真似」て
覚えることができている。
バイネクの話で確信をもってそのように
思えるようになりました。

実際にバイネクの話でも以前のドイツでは室内で子供を遊ばせる
ことが多く、物心がつく前からボールや様々な遊びをさせる環境が
少なかったといっていました。
そして人工的にこれらの環境づくりに取り組んだ
経緯がサッカー協会にあったともいっていました。

日本も本当にW杯で優勝を狙うのであればそういう環境から
見直さないといけないと思いました。

さらにバイネクの話で自分が指導しているチームの
ことを考えさせられました。
現状では自分一人しかコーチがおらず練習全体を
オーガナイズするために子供たちに
常時、プレーを見せられる環境にありません。
そういう意味でアシスタントコーチが必要だなと
改めて思いました。

全体を通して語られたのはドイツサッカーが以前は
フィジカル系の観点のみに注力して脳神経系からみた
アプローチを軽視していたこと。
今はそれを反省してフィジカル強度とともに、
局面における反応と反射においても世界を席巻できる
レベルに至ることができたという話でした。

この反射の話についてはまた詳しく話せたらと思いますので
それではまた。